がんを正しく知り、がんと上手に向き合う(わんこさん)

第4回より 「がんを正しく知り、がんと上手に向き合う(わんこさん)」

 

私の病気発覚のきっかけは、腸閉塞になったことでした。
そこで検査の結果、大腸がんと告知されました。

 

緊急手術をし、S状結腸がんステージⅣであることが判明しました。
晴天の霹靂とはまさにこのことでしたが、当時はがんの知識は全く無く「ステージⅣ」が何を意味するのかさえ分かりませんでした。
ステージとは「がんがどれだけ進行しているか」という、進行の段階を数字で表したものです。
私が受けた診断の「Ⅳ」以上のステージは「ない」ということを、その時点で理解できていたら、果たして私はどうしていたのか・・・。
今でも時々、その意味を考えることがあります。

 

現状を理解する知識がなかったがゆえに「手術をしたら治療は終わりだと思っていました。
ところが、抗がん剤治療が始まりました。
白血球減少や脱毛、食欲不振—–抗がん剤の副作用としてあげられるものには、全て見舞われたと思います。
それに加えて、少しずつがんの情報収集をするうちに厳しい現実を知ることになりました。
この先どうなってしまうのか・・・行き先の見えない不安に襲われました。
つらかったのは、周りの人に心配をかけたくなくて、誰にも相談できなかったことです。
からだもつらい。心もつらい。つらさの挟みうちのような日々を過ごしました。

 

このままではいけないと、どうにか立ち上がったのは、術後4ヶ月が過ぎたころです。
たまたま存在を知った、ある「がんを克服した人」と、実際に会って話をしました。精神的にどん底だった私が「こういう人もいるんだ」と、その人に勇気をもらい、前向きなスイッチが入った瞬間でした。

 

そして術後2年半が経った頃、「名古屋市がん相談情報サロン・ピアネット」が開設されたことを新聞で知ったのです。
ピアネットは、「がんのピアサポーター」といって、がんの体験者が研修を受けて、患者と同じ立場で相談にあたるということに、私の気持ちは引きつけられました。

 

さっそくピアネットを見学し、ピアサポーターとも話し、ここで何かお手伝いをしたいと思い、ピアサポーター養成講座に参加しました。
ここで沢山のがん仲間と出会い、また学んだ知識が、がんと向き合う上での安心材料となりました。

 

私ががん体験から学んだことは、まずは自己管理をすることです。
自分の身体の状態、体調、治療内容、検査結果などをしっかり把握することが、自分自身のがんと向き合うためには、とても大切です。
私はがんになってから日記をつけ始め、そこに食事内容、体重、体調、主治医から言われたこと、日々思うことなどを書いています。

 

そして、主治医と良い関係を築くこと。
医師とうまく付き合っていくにはコミュニケーション能力や患者力が必要だと思います。患者力とは、自らの病気を理解した上で、患者自らが治療について考える力であることは、がんの専門医の講義で学びました。

 

食事も大切だと思います。
食事療法と称して、様々な情報が氾濫していますが、栄養上、必要な食品をバランスよく食べることが一番ではないかと思います。
また、信頼できる情報源から情報収集をすること、ストレスをためないこと、仲間を作ることも非常に有益です。
一人で悩まないで、患者会に参加したり、相談支援室など利用するのは、経験上、自分のモチベーションを上手く引き上げられると思っています。

 

医学は日進月歩と言いますが、この数年だけでも、新しい手術法が普及したり、分子標的薬という新しい抗がん剤が、ごく普通に使われるようになり、治療成績がぐんと上がりました。
私の住んでいる名古屋にも平成24年から陽子線治療施設がフル稼働し、多くの患者さんが利用しています。

 

私が大腸がんにかかってから、すでに6年が過ぎました。「ステージⅣのがんからの生還」と胸をはるつもりはありません。
たまたま治りやすいタイプのがんだったのも知れないし、正直、これから何が起こるかという不安がすべて消えたとは言えないのです。
ただ、何が起きたとしても、冷静に前向きに考えられる力を「がん」を学ぶことによって、少しは身につけられたような気がします。

 

いま、がんと診断されたはかりの方は不安の真っただ中にあると思いますが、
正しい情報、新しい情報を知ることで、希望を持ってがんと上手に付き合っていって欲しいと思います。