第12回より 「雨あがりの虹(アッキーさん)」
目の前が真っ暗になるという経験を始めてしました。
乳がんの診断をうけた瞬間のことです。
・・・時間がとまって、先生の声や看護師さんの声が全く聞こえませんでした。まるで悪い夢を見ているかのような感覚—–それほどの衝撃だったのです。
病院を出て夫に電話したときに、初めて現実に引き戻されて大泣きしました。
最初の診断はステージ1で、手術を受ければそれておしまいと言われていました。がんとはいえ、少し気分が楽になりました。
ところが、術後に医師から、リンパ節転移があり廓清したという話を聴きました。
ここで初めて、自分ががんになってしまったことの恐怖やショック、不安に襲われ、どうしたらいいのかわからず、気持ちが混乱しました。
誰よりも一緒に考えてほしい存在である夫は、私のリンパ節転移の話を聴いて私以上にショックを受けてしまいました。誰に相談していいかわからなくなり、一番つらい時期でした。
私の場合、右胸の乳がんだったので、右手に負担がかかることは、以前のようにできなくなります。
私の生きがいの一つでもある「テニス」を諦めなければならないことは とりわけつらいことでした。
けれども、そのテニスの仲間が私を救ってくれました。
入院中、ほとんど毎日のように病室をのぞいてくれて、テニスの話、食べ物の話などたわいもない話で、おなか痛くなるまで笑わせてもらいました。
笑っていると忘れるんです。つらいこととか悲しいこととか絶望感、どこかに吹き飛んでいってしまうんです。
人間ってすごいな。コミュニケーションってすごいなって思いました。
よーし!負けてたまるか!楽しく明るく笑顔で過ごしてみよう!という気持ちにかわっていきました。
私の転機はそこでした。病気をしたことで一度リセット!これから新しい自分が始まると思ってこれからの毎日を生きてみようって思いました。もう一回いき直せるってなんだか嬉しいことのように思えて楽しくなってきたことを思い出します。
それからは入院中も退院してからも、つらかった抗がん剤治療中も、放射線治療も、たくさんの仲間や家族に支えてもらい、毎日、今日も楽しく過ごせてくれてありがとうと感謝しながら過ごすことができました。
もう無理かなと思っていたテニスもいろいろな人の支えで復活できて、今では病気になる前よりも楽しくできるようになりました。これが私のモットーの「楽しく明るく」です。
病気になっていなかったら、ごく普通に自分の周りにいる人たちが、本当はとても大切な、有難い存在であることにも気づかず、特別感謝の念を捧げることもなかったかも知れません。病気もまた、私にとっは貴重な体験だったと今は思っています。
つらいことも苦しいことも、もちろんありました。泣いたことも一度や二度ではありません。
でも、ちょっと頑張って、笑顔で過ごしてみて、ほんとによかったと思います。「やまない雨はない」という言葉がありますが、雨のあとには虹も出ます。
いま乳がん治療の真っただ中にあって、不安でいっぱいの仲間に届けたい言葉です。