卵巣がんになって 4期ピアサポーター吉岡一恵
私は自分の体の中で、婦人科系は具合が悪くなったことがなく、ここだけはがんにならないと変な自信があった。ところが卵巣がんになってしまい本当に驚いた。
色々な人に助けられながら治療を乗り越えてきた。その中から約6ヶ月の治療中にどんな思いがあったか、薬剤師とどんな話をしたのかをまとめる。
1.私の卵巣がん治療
2007年3月子宮がん検診で子宮のまわりがおかしいと診断される。
担当した医師はたまに卵巣が大きくなっている人がいると言い、内診で卵巣を調べた。一度大きい病院での受診を薦められたが、そんなに心配していなかった。
その後、市民病院で卵巣が大きくなっているから、手術をしなければならないと言われ驚いた。ただこの時は良性か悪性かはまだわからないと言われ、どちらか分からないのに悩むのは止めようと思った。
1週間後入院、検査の結果、医師から悪性の可能性があると言われショックを受けた。
手術は怖いが、がんがこのまま体内にあるのはもっと怖い。だったら、手術を頑張るしかないと思った。
結果は悪性で卵巣・子宮だけでなく腸にも転移があった。腸も切除したと聞き、ひどく落ち込んだ。手術の前に医師からは腸も切除するかもしれないと言われていたが、本当に切除したと聞いて、もう私はだめだなと思った。
そして抗がん剤治療は、4月から8月にかけて、TC療法を6回受けた。これは3・4週間ごとに2泊3日の入院で受けた。
2.がんと診断されて
2か月前に父親を大腸がんで亡くし、今度は自分ががんになるなんて。あんな風に死ぬんだな。何が悪かったのか。行いが悪かったのか。食べ物が悪かったのか。
がん、手術、抗がん剤が怖い。病気になる前に戻りたい。
父親が亡くなって少し落ち着いてきたのに、母親に迷惑をかけてしまうし、高校生と中学生の子どものことも心配だった。どうしても母親に来てもらって子どもの面倒を見てもらうことに申し訳なさを感じていた。
主人は結婚以来貯めていたへそくりを出して、「これを使って」と言ってくれた。でも、さすがにそのお金は使えなかった。
3.抗がん剤治療の前に
冊子を手渡され、副作用やその対処法について分からなかったことは看護師に聞いた。
同室で抗がん剤治療を受けている人に、副作用や日常生活はどうなるかなどを聞いた。脱毛後のかつらについてもどこで買ったらいいのかを教えてもらった。
毎回治療の前に薬剤師が、不安なことや分からないことはないかと聞いてくれた。
4.私に現れた抗がん剤の副作用と薬
足裏の痛みやしびれには、ツムラ芍薬甘草湯エキス顆粒とモービック錠を服用。
この漢方は私には飲みにくく、量も多くて飲むのに苦労した。
便秘には重カマ(酸化マグネシウム・便通をよくする、胃酸を中和する、などの効能がある)これは腸を切っているのでつないだところに負担がかからないように便を柔らかくするという意味でも服用していた。骨髄抑制には白血球が少なくなって、注射で対応した。脱毛、口内炎、抗がん剤の味を感じるなどは我慢するしかなかった。
5.薬剤師に聞いたこと
1回目の治療前に聞いたことは、抗がん剤に対する副作用と不安について。薬剤師の答えは「皆さん受けている治療なので頑張って下さい」だった。
この時は心配していたアレルギー反応も、吐き気などの副作用もなく思ったより大丈夫かなという感じだった。
アレルギーに対しては点滴に薬を入れ、飲み薬も服用していた。
2回目の治療時は、しびれ止めのツムラ甘草芍薬湯エキスが飲みづらかったから、他の薬に変えて欲しいと言った。大人で薬が飲めないなんて恥ずかしいと思ったが、変えてもらえるならと言ってみた。しかし薬剤師には、「この薬しかないのでオブラートを使ってみて下さい」と言われた。
すぐに病院の売店に行くと逆円すい形の袋になっているオブラートを見つけ早速使ってみた。袋になっているから、薬を入れたら口を閉じるだけで不器用な自分でも簡単に使うことができた。
オブラートを使うことを思いつかないなんてやっぱり平常時とは精神的に違うのだとその時気付いた。
3・4回目の治療時に聞いたことは、吐き気が強くなりオブラートに包んでも薬が飲めない、食事も出来ないということだった。「薬は飲めるだけでいいから頑張って飲んで下さい。食事は無理をせず、食べたいものを食べたい時にとって下さい」と言われた。この時は副作用がだんだん強くなっていて、精神的に一番きつくなっていた。点滴の針を抜いてどこかへ逃げ出したい気持ちで一杯だった。
5・6回目の治療時は、点滴を始めると抗がん剤の味を感じるようになった。
漢方の薬を飲むことができなくなったことから、足の裏の痛みが強くなり、このままでは歩けなくなるのではないかと心配だった。薬剤師は「味や痛みは治療が終わればよくなると思います。もう少しだから頑張ってください」と言った。ただ、薬剤師は抗がん剤の味を感じるというのは聞いたことがなかったそうだ。
この時、治療は嫌だったが、こんな気持ちで治療を受けても薬の効果が得られないのではないかと思い、抗がん剤がよく効いている、抗がん剤ありがとうと思いながら点滴を受けていた。
6.治療が終わって思ったこと
6回の治療全部に薬剤師が来てくれたことは本当にありがたかった。
いつも最初に「どうですか?」と声をかけて、話を聞いてくれたことは、安心して治療を受けることにつながった。治療の度に聞きたいことがあり、分かっていることでももう一度薬剤師に説明してもらうと安心、納得できた。
主治医、看護師、薬剤師、その他病院スタッフのおかげで無事治療が済み、5年が過ぎた。
今、普通に生活できていることやピアサポーターとして活動できることに感謝している。