薬剤師さんに伝えたいこと 5期受講生 東千佳子
病歴と治療歴
私は2000年にオーストラリアに移住しました。学生生活を経て、普通に会社員として生活していた2010年5月に虫垂炎の手術を受け9月に大腸ガンが発覚しました。
その際の手術で大腸に150個のポリープが見つかり、内二つが既にがん化しており、うち一つは破裂していました。結果、大腸をほぼ全摘し小腸ストマ造設となりました。
ポリープの多さから、家族性大腸ポリポーシスではないかとの疑いがあります。
帰国後2010年11月からFOLFOXを開始、卵巣転移が確定した2012年8月からFOLFILIに切り替え、現在も幸運なことに治療継続中です。
薬品リスト
現在服用中、使用中の薬剤のリストは以下のようになります。
薬について思う事
まずは、薬は正しく飲まないと意味がないということです。
それから抗がん剤治療を継続するには副作用のコントロールが不可欠です。そのためには賢く薬剤を使用する事が重要と思っています。
薬剤師とのエピソード
現在お世話になっている薬局はアットホームな雰囲気で、椅子の代わりにソファーが置いてあります。ソファーの間も間隔が開いていて、患者のプライバシーが守られる環境になっています。
また対応する際薬剤師さんは床に膝をつき、目線を下げて応対してくれるので患者にとって非常に話しやすい環境です。
また、会計の際なども薬剤師さんが積極的に動いてくれるので、患者が動く必要がありません。体力を消耗する治療中の患者にとっては非常に有難いです。
また、薬の使い方等も詳しく教えてくれます。
オーストラリアでの初期治療から感じたこと
私はがん発覚から日本に帰国するまでの六週間をオーストラリアで過ごしましので、オーストラリアでの六週間にわたる医療体験に基づいて三点ほどお話させていただきたいと思います。
まず、がん患者に対する精神面でのサポート体制の違いです。私は帰国するまでの6週間で、精神腫瘍医や、がん専門心理カウンセラーから10回以上のカウンセリングを受けました。これはオーストラリアではごく普通のことなんですが、日本では現在行われているでしょうか?一回のカウンセリングは一時間ですので、私は自分ががんになったということを心理学の専門家に十時間以上話したことになるんですね。これは自分にとって、病気と向き合う大変良い機会となりました。日本でも、こういった精神面でのサポート体制が確立される必要があると思います。日本でも、こういった精神面でのサポート体制が確立される必要があると思います。
次に、がん治療コーディネーターの導入です。がん治療コーディネーターの役目は、患者と医療チームの架け橋になることです。がんと診断されると、様々な専門医と連絡をとる必要があります。患者が治療に専念できる体制ではないんですね。
オーストラリアでは、がんと診断されるとこのがん治療コーディネーターが患者にまず派遣されることになっています。比較的新しいシステムなのですが、非常に有効で私もその恩恵に授かった一人です。こういったシステムが日本でも早急に導入されることを願って止みません。
三点目として、遺伝性がんの認知度を広め、予防、治療に役立てることです。
日本ではがんのことを話すこと自体タブーな面があります。ましてや遺伝生のがんとなると、及び腰になる方がほとんどだと思います。自分は家族性のがんと診断されたあと、すぐに遺伝子カウンセラーと面談をしています。正しい知識を持つことは、今後の病気の予防、治療に役立ちます。もっとオープンにこういった遺伝性の病気のことを話せる社会作りができるよう望んでいます。
がんになって感じたこと
仕事に生きがいを感じていたので、非常にショックでした。まだ40歳だったということもあり、青天の霹靂でした。生きがいを喪失して、うつも経験しました。
現在感じていること
ひとつは、斜め前向きに構えるということ。
がんは巨大な台風みたいなものです。まともに向かって行っては跳ね飛ばされてしまいます。すこし斜めに構えるぐらいで、相手の様子を見ながらじりじりと斜め前にでも進んでいければと思います。
最後に「自分に起こることが100%」ということです。がんになると、様々な数字やパーセンテージに振り回されます。このお薬を使えば何ヶ月多く生存できるとか、五年生存率が何年であるとか、この抗がん剤が効く割合は何パーセントであるとかです。これは知識として知っている必要はあるのですが、これに振り回されて自分らしさを失ってしまっては意味がないと思うのです。ですから私が言いたいのは、今自分に起こっていることが100%、全てだということです。自分を信じて、一日一日を自分らしく生きて行くことが長生きに繋がるのではないかと信じています。
薬剤師さんに希望すること
治療やその副作用に対する正しい知識を持っていただきたいと言うことと、これからも学んでいこうという強い意志を持っていただきたい。患者に対する共感を持っていただくこと、そして患者を助けたいという熱意を持っていただきたいということです。
がん患者というのは、非常に精神的に不安定になっています。その患者を辛抱強く見守っていこうという忍耐強さが薬剤師には求められると思います。